味噌って原料・色・味という3つの軸で見ていくと、すっと整理できて選ぶときの迷いが減っていきます。
さらに、それぞれの地域で育まれた味や食文化を知ることで、味噌の世界がもっと身近に感じられるようになるかもしれません。
この記事では図解を交えながら、味噌の種類をやさしく整理し、料理との相性や地域の特徴まで丁寧に紹介します。 なんとなく選んでいた味噌が、「自分らしく選べる味噌」になるきっかけになればうれしいなと思っています。
毎日の食卓が、ちょっとだけ楽しく、ちょっとだけ豊かになりますように。
味噌の分類は3つの軸で考える

味噌にはさまざまな種類がありますが、基本的には次の3つの軸で分類できます。
- 原料(米・麦・豆)
- 色(白・淡色・赤)
- 味(甘口・辛口)
この3つの軸を知ることで、「なぜ味が違うのか」「どんな料理に合うのか」が自然とわかるようになります。
それぞれの軸は独立しているので、たとえば「米味噌で赤味噌で辛口」という組み合わせもあります。
なお、地域によって使われる味噌の傾向は異なりますが、これは分類というより「食文化の背景」として後ほどご紹介します。
まずは、味噌そのものの性質を決める3つの軸から見ていきましょう。
原料による分類|米味噌・麦味噌・豆味噌の違い

図2のように味噌の基本は「大豆・麹・塩」。 このうち、どの穀物を麹(こうじ)に使うかによって、味噌の種類が分かれます。
- 麹の種類と特徴
- 米麹:蒸した米に麹菌をつけて育てたもの。。全国で最も一般的で、甘みとコクのバランスが良い味噌に。
- 麦麹:蒸した大麦に麹菌をつけて育てたもの。香ばしい風味と軽やかな甘みが特徴。
- 豆麹:蒸した大豆に麹菌をつけて育てたもの。濃厚で力強い味わいの味噌になる。
- 豆味噌は少し特殊で、大豆をそのまま麹にして仕込むのが特徴です。
そのため、原料は大豆と塩のみになります。
- 豆味噌は少し特殊で、大豆をそのまま麹にして仕込むのが特徴です。

図3にあるように、この「麹の種類」が味噌の香りや味わいを大きく左右します。
また、複数の味噌をブレンドした「合わせ味噌」も人気です。
たとえば米味噌と麦味噌を組み合わせると、香りと甘みのバランスが取れた味噌に。
季節や料理に合わせて調整できるので、家庭用としてもよく使われています。
こうした基本を踏まえて、代表的な3種類の味噌について見ていきましょう。
米味噌(こめみそ)
- 原料:米麹+大豆+塩
- 特徴:全国で最も流通している味噌。味のバランスがよく、使いやすい。
- 主な産地:信州(長野県)、東北地方など
- 味の傾向:甘口〜辛口まで幅広く、色も淡色〜赤までさまざま
麦味噌(むぎみそ)
- 原料:麦麹+大豆+塩
- 特徴:麦の香ばしさがあり、甘みが強め。九州や四国でよく使われる。
- 主な産地:熊本、愛媛、など
- 味の傾向:甘口が多く、色は淡色〜赤
豆味噌(まめみそ)
- 原料:大豆麹+塩(米や麦は使わない)
- 特徴:熟成期間が長く、濃厚で渋みのある味。コクが強く、クセになる味わい。
- 主な産地:愛知県(八丁味噌が代表)
- 味の傾向:辛口で赤褐色。煮込み料理にぴったり
豆知識:麹の種類は味噌以外にも使われてる!
米麹は甘酒や塩麹、麦麹は麦焼酎、豆麹は豆鼓(とうち)など、味噌以外の発酵食品にも使われているんです。
原料による違いは、味噌の「香り・味・色・使い方」に直結します。 このあと紹介する「色」や「味の傾向」も、原料と熟成期間によって変わってくるんですよ。
色による分類|白味噌・淡色味噌・赤味噌の違い

味噌の色は、ただの見た目ではなく「発酵の進み具合」や「原料の違い」を映し出す鏡のようなものです。
なぜ色が変わるの?
味噌の色は、主に以下の要素によって変化します。
- 熟成期間:時間が長いほど、色は濃くなる
- 温度と湿度:高温で熟成すると、色の変化が早く進む
- 原料の違い:大豆の種類や麹の量によっても色味が変わる
- 塩分濃度:塩が多いと発酵はゆるやかに進み、色づきも穏やかになる
この色の変化の正体は「メイラード反応」と呼ばれる自然な化学反応。糖とアミノ酸が反応して、褐色の色素や香ばしい香りが生まれる仕組みです。焼き色のついたパンや煮物の香ばしさと同じ原理なんですよ。
白味噌になるには?
- 熟成期間:数週間〜2か月程度
- 麹の割合:多めで甘みが強い
- 塩分:控えめ〜中程度(甘口が多いが、しっかり塩気があるタイプも存在)
- 管理:低温で発酵をゆっくり進め、色づきを抑える
白味噌は、麹をたっぷり使い、短期熟成で仕上げるのが特徴。大豆を「煮る」ことで色の変化を防ぎ、淡いクリーム色とやさしい甘みを引き出します。
淡色味噌になるには?
- 熟成期間:2〜6か月程度
- 麹の割合:中間で、甘みと塩味のバランスが良い
- 塩分:中程度〜やや高め
- 管理:常温〜やや高温で発酵させ、ほどよい複雑さを出す
白と赤の中間にあたるのが淡色味噌。黄土色〜薄茶色の見た目で、すっきりした旨みと程よいコクがあり、どんな料理にも合わせやすい万能選手です。
赤味噌になるには?
- 熟成期間:半年〜1年以上
- 麹の割合:少なめで、甘み控えめ
- 塩分:やや高めで保存性が高い
- 管理:常温でじっくり、場合によっては低温で長期間熟成
赤味噌は、しっかりと時間をかけて発酵させることで、濃い赤茶色と深いコクを生み出します。熟成が進むほど旨みが強まり、力強い味わいが楽しめます。

赤味噌の「赤だし」とは?
「赤だし」は赤味噌を主体にした味噌汁。豆味噌や合わせ味噌を加えて深い味わいにすることが多いですよ。
色の違いは、味の違いでもある
味噌の種類 | 熟成期間 | 色 | 味の傾向 |
---|---|---|---|
白味噌 | 約1〜2週間〜1ヶ月 | クリーム色 | 甘くてまろやか |
淡色味噌 | 約2〜6ヶ月 | 黄土色〜薄茶色 | バランス型 |
赤味噌 | 半年〜1年以上 | 赤茶〜濃茶色 | 塩味とコクが強い |
このように色の違いは「発酵の期間・麹の割合・温度・塩分」という要素が複雑に絡み合ってできています。 だからこそ、味噌の色を知ることは、味や使い方を理解する大きなヒントになります。
Q&A: 色が濃い味噌は塩分も高いの?(タップで開く)↓↓
- Q色が濃い味噌は塩分も高いの?
- A
いいえ、一概には言えません。
赤味噌は長期熟成や高塩分のものが多いですが、色の濃さは「熟成の長さ」や「発酵温度」に左右されます。白味噌でも塩分がしっかりしたタイプはあります。
- Q白味噌の白い色はどうやって作られるの?
- A
短期熟成・麹を多めに使う・低温で発酵を管理する、さらに大豆を「煮る」ことで褐変を防ぐ、といった工夫で美しい淡い色が生まれます。
- Q天然醸造では温度管理はどうしてたの?
- A
昔ながらの味噌づくりでは、人工的な温度調整はせず、四季の流れに任せていました。
冬に仕込み、夏に発酵が進み、秋冬に落ち着く「寒仕込み」が代表的です。
蔵や木桶が自然の温度調整役を担っていました。(※詳しくはこちらにジャンプ → 天然醸造の温度管理とは? )
- Q淡色味噌はどんな料理に合うの?
- A
白味噌ほど甘すぎず、赤味噌ほどクセも強くないため、みそ汁・炒め物・煮物と幅広く使えます。
家庭用の定番として全国的に流通しているのもこのタイプです。
味による分類|甘味噌・甘口味噌・辛口味噌の違い
味噌の味は、「甘味噌」「甘口味噌」「辛口味噌」といった分類で表されることが多く、これは主に塩分濃度と麹の割合によって決まります。

図5をご覧いただくとわかるように、麹の量が多いほど甘く、塩分が高いほど辛口寄りになります。
この関係を理解しておくと、自分好みの味噌を選びやすくなります。
味噌の味を左右する主な要素
味噌の味わいは、原料だけでなく「麹・塩分・熟成期間」の組み合わせによって大きく変わります。
基本のポイントを押さえておくと、甘口と辛口の違いもスッと理解できます。
- 麹の量:多いほど甘みが強くなる
- 塩分濃度:高いほど塩味が強くなる
- 熟成期間:長いほど味に深みとコクが出る
味の分類と塩分濃度の目安
甘口から辛口までの違いは、塩分濃度でざっくりと区別できます。
分類 | 塩分濃度の目安 | 味の傾向 | 主な特徴・例 |
---|---|---|---|
甘味噌 | 約5〜7% | 甘みが強く、塩味はかなり控えめ | 白味噌、西京味噌など |
甘口味噌 | 約7〜10% | 甘みと塩味のバランスが良い | 信州味噌、合わせ味噌など |
辛口味噌 | 約10〜13% | 塩味が強く、コクと深みがある | 赤味噌、豆味噌など |
※塩分濃度は地域や商品によって異なり、あくまで目安です。
補足:表記の違いに注意
- 「甘味噌」は特に甘みが強い味噌を指し、白味噌などが代表。
- 「甘口味噌」は甘味噌ほど甘くはないが、塩分控えめで日常使いしやすい。
- 「辛口味噌」は塩味が強く、煮込み料理や濃い味の味噌汁に向いている。
- さらに「中辛」「やや甘口」などメーカー独自の表記も多く、全国共通の明確な基準はありません。
甘口・辛口という言葉は「味の濃さ」ではなく、「塩分と麹のバランス」を表しています。 同じ米味噌でも、麹の量が多ければ甘口、少なければ辛口になることもあるんですよ。

見た目だけじゃ、塩分の強さはわからないよ
地域ごとの味噌の特徴|食文化と結びついた味

出典:全国味噌工業協同組合連合会「地域と味噌」
味噌は地域の気候や食文化によって使われ方が大きく変わります。 「地元の味噌=家庭の味」という感覚が根づいていて、同じ米味噌でも地域によって味や色がまったく違うこともあります。
京都:西京味噌(白味噌)
- 特徴:麹が多く、甘くて上品な味わい。熟成期間が短く、色も淡い
- 用途:祝い膳や酢味噌、白味噌雑煮など
- 文化背景:京料理の繊細さに合わせた、やさしい味
長野:信州味噌(淡色)
- 特徴:米味噌で、色も味もバランス型。全国流通しているスタンダードな味噌
- 用途:味噌汁、炒め物など万能
- 文化背景:寒冷地でも発酵が進むよう、塩分はやや高め
愛知:八丁味噌(豆味噌)
- 特徴:大豆のみで作られ、熟成期間が長く、濃厚で渋みのある味
- 用途:味噌煮込みうどん、味噌カツ、どて煮など
- 文化背景:濃い味付けが好まれる土地柄。保存性も高い
九州:麦味噌(甘め)
- 特徴:麦麹を使い、香りが豊かで甘みも強い
- 用途:味噌汁、炒め物、味噌漬けなど
- 文化背景:温暖な気候と甘めの味付けが好まれる食文化
地域ごとの味噌は、その土地の気候や暮らしに寄り添って育まれてきました。
「どの味噌が正解」ではなく「どの味噌が自分の暮らしに合うか」を知ると、選ぶ力にもつながっていきます。

味噌は“ご当地調味料”の代表格!
全国に1000種類以上の味噌があると言われていて、同じ県内でも地域ごとに味が違うことも。まさに地元の味ですね。
味噌の種類と料理の相性|どの味噌がどんな料理に合う?
味噌の種類によって、料理との相性は大きく変わります。 「この料理にはこの味噌」と知っておくと、味のまとまりがよくなり、食卓がもっと豊かになりますよ。
料理 | 合う味噌 | 理由 |
---|---|---|
朝の味噌汁 | 白味噌 | やさしい甘さで飲みやすい。体にすっとなじむ味わい |
味噌煮込み | 赤味噌・豆味噌 | コクが強く、煮込み料理に深みを与える |
炒め物 | 麦味噌 | 香ばしさが立ちやすく、野菜や肉とよく合う |
味噌カツ・田楽 | 豆味噌 | 渋みと濃厚さが、甘辛いタレにぴったり |
料理に合わせて味噌を選ぶことで、「いつもの味」がぐんと引き立ちます。 たとえば、朝は白味噌でやさしく、夜は赤味噌でしっかり…そんな使い分けも楽しいですよ。
合わせ味噌は、複数の味噌をブレンドして味のバランスを整えたもの。 米味噌・麦味噌・豆味噌の組み合わせだけでなく、甘口・辛口の調整にも使われます。 市販品は使いやすく、家庭料理にもぴったりです。
赤味噌・白味噌、それぞれに合う具材をもっと詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。
→ 白味噌に合う具材ベスト10|やさしい味わいを引き立てる味噌汁の組み合わせ
よくある疑問Q&A

- Q白味噌と赤味噌、栄養は違う?
- A
はい、違いがあります。 白味噌は熟成期間が短く、麹が多いため糖質がやや高め。
赤味噌は熟成が長く、アミノ酸や抗酸化成分が豊富です。 ただし、どちらも発酵食品として腸内環境を整える力があります。 「甘い=体に悪い」ではなく、使い方と量のバランスが大切です。
- Q味噌の種類で塩分は変わる?
- A
変わります。
一般的に、甘口味噌は塩分が少なく、辛口味噌は塩分が多い傾向があります。 ただし、同じ種類でもメーカーによって塩分濃度は異なるため、気になる方は「食塩相当量」をチェックすると安心です。
- Qどの味噌が体にいいの?
- A
「無添加で、発酵がしっかり進んだ味噌」が体にやさしいとされています。
原材料が「大豆・米(または麦)・塩」だけのものを選ぶと、余計なものが入っていない分、安心感があります。 詳しい選び方やおすすめ商品は、こちらの記事で紹介しています。
まとめ:味噌の種類を知ることは、選ぶ力を育てること
味噌は、私たちの体をつくる大切な食べもの。 その種類を知ることで味の違いだけでなく、地域の文化や発酵の奥深さにも触れることができます。
「白味噌はやさしい甘さ」「豆味噌は渋みとコク」——それぞれに個性があり、料理との相性もさまざま。 どれが正解ということはなく、「自分の暮らしに合う味噌」を見つけることが、毎日の食卓を豊かにしてくれます。
小さな選択が、大きな安心につながる。 そんな味噌選びを、今日から始めてみませんか?
コラム|昔ながらの天然醸造の味噌づくり
現代では温度や湿度を機械でコントロールできますが、昔ながらの天然醸造では四季の移ろいに任せて味噌を熟成させていました。
- 寒仕込み:冬に仕込んで、夏を越し、秋以降に完成
- 蔵と木桶の役割:蔵の土壁や木桶が天然の温度調整役
- 塩分で調整:高塩分にすれば発酵がゆっくり進み、保存性も高まる
その年の気候によって味や色に違いが出るのも天然醸造ならでは。今のように「狙った味」にするのではなく、自然に委ねたからこそ生まれる深みがありました。